どこまでゆくのか、浅田真央選手の「ノクターン」&ラフマニノフ~NHK杯観戦記【三位一体節後25】

 注:選手の写真は、会場外にあったパネルを撮影したものです。すべて、昨年のNHK杯の様子。
   

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 グランプリシリーズ 2013/2014 第4戦 日本大会

 NHK杯 国際フィギュアスケート競技大会 NHK Trophy

  2013年11月8日(金)~11月10日(日) @ 国立代々木競技場第一体育館



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 初日と最終日に行ってまいりました。
 男女のフリー等があって、ほとんどの競技の結果が出る2日目は、最速先行抽選から直前の追加販売まで出来る限り頑張りましたが、結局チケットがとれなかった。
 従って、男女およびペアのSP、アイスダンスのFD、エキシビションに関しては、生で観てから後にTV録画で再見、男女およびペアのフリー、アイスダンスのSDは、TV観戦のみ、ということになり、以下の感想も、それを前提としたものです。



 一番の収穫は、やはり、実戦における浅田真央選手の「ノクターン」を、初めて生で観ることができたこと。

 浅田選手の「ノクターン」に関しては、これまで映像や生(エキシビションバージョン)で何度も観て、感想も書いてきましたが、
 明るいリンクにおける戦闘モードの「ノクターン」、しかも、以前あまりの迫力に驚き、記事にも書いたアメリカ大会よりも、さらに修正が加えられ、精度・純度の高められた演技は、すでに極限まで研ぎ澄まされ、始めから終わりまで息ができなくなるほどの緊張感に貫かれていながら、美しさ、そして、驚くべきことに、優しさ、しなやかさの極み。
  ピリスの大名演と今や限りなく一つになって、人間の肉体がこんなにも音楽そのものを表現することができるのか、と、ただただ呆然と見つめているうちに、あっという間に終わってしまいました。
 明るい光の中で、さらにまばゆい光をふりまきながら舞い踊る妖精を現実に目の当たりにしているかのようだった。

 この超絶演技の背後にある、彼女の努力のすさまじさ、戦いの激しさがわかっているだけに、満員の大観衆とともにスタオベの拍手をしながら、またまた、「もうこれで十分だあっ・・・・!」と、目頭が熱くなってしまった。
 音楽の世界で例えるならば、どんなに偉大な演奏家でも、一生のうちに数えるほどしかできない至上の演奏。すでに、そんなレベルに到達してしまっているような気がします。
 比較するのがおかしいことはよくわかっていますが、少なくとも、わたしが長年ただひたすら音楽を聴き続けてきた中で最高だと思われる幾つかの特別な演奏に比べても、決して負けないくらいの感動的な演技だったことだけは、まちがいありません。

 ただ、浅田選手は、「まだ途中。これからどんどん良くなる」と言って、さらなる高みを一直線に見つめ、ただひたすら前へ、前へと進もうとしています。
 ここまでくると、どこまで頑固者なのかと、あきれてしまうほどですが、アスリートの魂とは、こんなにも気高く、強いものなのか。
 これは最早、良い成績を目指すとか、他の選手との戦いとか、そんな次元をはるかに超えた、天才アスリートとして生きる宿命を負った浅田選手の、限界への挑戦、自分自身との戦いなのでしょう。
 そして、その結果に生み出されるものは、純粋に芸術的な演技であり、それを観た世界中の人々の心に灯る大きな感動に他なりません。

 後は、もう、浅田選手がどこまで到達するか、ただただ見守るばかりです。


 浅田真央選手のフリーのラフマニノフに関しては、この前感想を書いたばかりだし、TV観戦だったこともあり、今回はもう詳しくは書きません。
 浅田選手も例によって「まだまだ」と言っており、年末の全日本において、おそらく「究極」に限りなく近づいた生の演技を観ることができると思われるので、その時まで詳しい感想はとっておくことにします。
 ただ、TVで観たかぎりでは、前回のアメリカGPでうまくいかなかった部分を徹底的に修正して、さらに迫力を加えた、圧巻と言うより他ない演技でした。


 浅田選手、上記「ノクターン」も含めて、自分自身の目指す「究極」に向けて、さらなる進化への確かな手応えは感じているようで、「まだまだこれから」と言いつつも、試合後の表情は、自信にあふれ、とても満足そうでした。
 マスコミは、演技の細かいミスや自己最高点というようなことばかり報じていますが、そんなことはかまいもせずに、ただただ演技の完成だけを見据え、すべての調整が自分の思い描く構想通りに着実に進んでいることだけを喜んでいる。

 
 そんなしっかりとした手応えの試合の後、現時点での最高の「ノクターン」と「ラフマニノフ」の後で、演じられたエキシビションの「スマイル」は、以前予想した通り、最高の輝きを放っていて、会場のみんなが笑顔、笑顔。
 やはり、このプログラムの「スマイル」は、力を出し尽くして戦った後の、「スマイル」なのだ。

 あと何度、この笑顔が見られるだろう。

 浅田選手の思い描く「究極の演技」の完成を心から待ち望み、応援しながらも、心の片隅に、もうこの笑顔が数えるほどしか見られないのだという言いようのないさみしさが、早くも芽生えつつあることを意識し始めている今日この頃です。

 

 いつものことながら、駆け足になってしまいますが、その他のことも。


 女子シングルでは、わたしが観たSPで一番最初に滑った宮原知子さんの演技が印象的でした。
 磨きがかかったスケーティングは自信にあふれ、小さな体がより大きくしなやかに見えました。
 初めて生で観たラジオノワちゃんは、生き生きとはじけるような動きと技のキレが圧倒的。
 順位上は二人に差が出てしまいましたが、SPの演技の出来栄えとしては、宮原さんとラジオノワちゃんとは特に差がなかったように感じました。(細かい所は席からは見えませんし、見えたところでよくわかりませんが。)

 マルケイ選手のしっとりとした美しい演技には思わず陶然となりましたし、久しぶりに見るレオノワ選手も、元気な姿(十八番の顔芸)を見せてくれた。
 ゴールド選手はこれまで、その輝くような美しさに比べ、何となく直線的な動きがひっかかっていたのですが、今季のSPのガーシュイン(前奏曲)では、曲のおもしろさもあって、その直線的な動きをうまく長所に転じさせ、魅力的なプログラムになっていると感じました。それに対して、フリーの「眠れる森の美女」は、いかにも合っているようで、何となくしっくりこない、というのは、わたしの個人的な感想。


 男子シングル

 わたしが観たSPでは、ここに来て調子を崩している有力選手の中にあって、何と言っても、織田選手の演技が軽やかで楽しく、圧巻だった!
 大観衆の心をがっちりとつかんで、割れんばかりの歓声、総スタオベの大拍手。
 ここのところ、高橋大輔選手が不調だったので、これはまちがいなく首位かと思いきや、高橋選手、ものの見事にこれまでのマイナス点を修正し、演技そのものも一段レベルアップさせてきていて、トップに。
 このあたりは、浅田選手と同じ超一流選手のすごみを見せつけてくれました。

 高橋選手&織田選手は、その後、フリーでも絶好調を保ち続け、ワンツーフィニッシュとなったのは、周知の通り。
 高橋選手のフリーのビートルズメドレーは、聴けば聴くほど凝りに凝っていることがわかってきましたが、これはまた、改めて。

 ここにきてアボット選手が、「代々木の呪い」を見事に断ち切り、自分自身も大満足の夢のように美しい演技を見せてくれて、「最後のグランプリシリーズ」で、ついに表彰台にカムバックしたことも、たまらなくうれしかった。
 おめでとう!そして、すばらしい演技をありがとう!


 ペア

 やはり、ボロソジャル&トランコフ組が、すっごい!の一言。
 わたしが見たのは、ショートの「仮面舞踏会」だが、かつて浅田真央選手がオリンピック前のシーズンに演じて印象的だった、壮絶な「仮面舞踏会」とは異なり(五輪シーズンには同じ曲をSPで可憐に演じています)、本来のワルツのテンポを大切にした、どちらかと言うと典雅な表現でありながら、その中に、このコンビならではの超絶技巧をこれでもか、これでもかとばかりに盛り込んだ、正に「王者の演技」。

 残念ながら、生では観ることができませんでしたが、フリーの「ジーザス・クライスト・スーパースター」も、限界をはるかに突き抜けてしまっている、「異次元の演技」。

 最近の演技を観る限り、失敗などまったくありえないような水準に達しているこのペアが、エキシビションで、(おそらくフェルナンデス選手のまきちらした水が影響?して)まさかの転倒をした時には、会場中が悲鳴をあげた。
 何事もなかったようでよかった。

 ペン&ジャン組のペンちゃんが、4月に国別選手権で観た時に比べ、わずかな間にワザのキレが増した上、ものすごくしなやかで大人っぽくなっていた他、もう一組の中国ペア、スイ&ハン組も魅力的な演技を見せてくれて、これからの中国新勢力の活躍を予感させた。
 二組とも、趙宏博さんがコーチとしてキス&クライに座っていてびっくり。


 アイスダンス

 こちらも、いうまでも無く、デイビス&ホワイト組が、すっごい!の一言。

 わたしが観た、フリーの「シェヘラザード」は、あたかもスペクタル大活劇を観るかのようだった。しかも、CGをふんだんに使用した、3D特撮映画!

 メリ&チャリに続く、シブタニ兄妹を含む上位4チームくらいは、どのカップルが銀、銅になってもおかしくない実力派ばかり。どのプログラムも、特色があり、見応え満点で楽しめた。
 また、下位チームでも、ドイツのコルブ&カルーゾ組の「魔法をかけられて」などは、まるでディズニーの最高のショーを観ているような楽しさ。

 いつものことながら、アイスダンスは、観ていてほんとうに楽しい。
 スケートの美しさ、楽しさの原点が、ここにあるような気がする。アボット選手のように、すべりそのものが美しい選手が好きなわたしには、たまらない。


 アイスダンスのリード姉弟組、ペアの高橋&木原組も、それぞれ、ケガや体調不良などに負けず、素晴らしい演技を見せてくれました。
 特に、リード姉弟の「将軍」は、その鮮やかながら上品な衣装も含め、昨年のビートルズメドレーに続く、名プログラムだと思います。



 激戦を終えた後のエキシビション、みんなアットホームな感じで、よい雰囲気のすばらしいショーでした。
 
 浅田選手の心からの「スマイル」のすばらしさは前述の通り、 
 実戦では失敗もあった、無良選手、鈴木明子選手、長洲未来選手なども、力のこもった演技を見せてくれて、
 ラストの高橋選手にいたっては、出ました!マンボ祭りの阿鼻叫喚。
 いつもながら、何だ、こりゃ。すごい、すごすぎる。いろんな意味で。

 「豊の部屋」改め「インタビュー・コーナー」も、初めて生で見たけれど、楽しかった。
 パネル回答形式の共通質問は、「生まれ変わったら何になりたい?」というものでしたが、
 浅田選手が、「これまでスケートばかりしてきたので、スケートをしていない自分自身になりたい」と言うようなことを答えて、会場全体にしみじみとした空気が流れてしまった後、大爆笑自虐回答?でその場を明るくまとめあげた高橋大輔選手、さすがに器の大きさを感じさせた。
 宮原選手、アボット選手ほか、数名の選手のインタビューが、放送ではカットされていたのが残念。
 なぜ、あれだけたっぷり時間を取っていながら、数名だけカットする?(と、ぜいたくな注文。その他の部分では、NHKさん、ほんとうによくやってくれた)

 ショーの冒頭に、荒川さんといっしょに印象的な演技を見せてくれた少年少女スケーターも、すばらしかった。
 フィナーレの一番最後には、少年少女たちと出場選手がペアになって滑り、ペアスパイラルや一緒にスピンをしたりして、楽しかった。
 中国ペアのハオ・ジャンさん(←だと思ったが違うかも)に頭上まで持ち上げられて、ぐるぐる回されていた少女も。うらやましい、というより、本人はかなり怖かったのではないかと思うが、一生の思い出になりそう。


 ショーの間ずっと、何だかものすごく居心地がいいな、と感じられていたのは、メンバーが、またもや、ザ・アイスの仲間たちとかぶっていたせいか。(夏に「THE ICE」で見たプログラムも多数)



 NHK杯の一人一人の演技についての詳しい感想は、また改めて奥之院に書く予定。

 また、GPシリーズも中盤を終えて、有力選手の今季のプログラムもあらかた出そろったので、音楽的に注目のプログラムを中心に、また改めて記事を書く予定です。



 会場に展示されていた写真パネル


 昼

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 夜

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 左から

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 パンフ

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 最終日、エキシビションの日。


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  ☆    ☆    ☆



 最後になってしまいましたが、少し早いカンタータのお知らせ。


 今度の日曜日、11月17日(三位一体節後第25日曜日)のカンタータは、

 第1年巻のBWV90
 第2年巻(コラール・カンタータ)のBWV116

 の2曲です。


 コラールカンタータのBWV116、心にしみる名曲です。

 バッハの全カンタータの中でも珍しい三重唱を聴くことができます。


 過去記事は、こちら↓


 <三位一体節後第25日曜>
 
    お気に入りのアリア6・暦の終わりに 心に染みる3重唱(BWV116)





そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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