続々・黄金の輝きは果てしなく続く~今年聴いたCD・伝統音楽+ポップスの王道(日本)編

 CDなどを聴いた時、必ずその場で感想を書くようにしている。
 だから年末などは、それをいくつか貼り付けるだけで記事になるのでとても楽なのだが、さすがにちょっと古いのが多くなってしまう。
 そのあたりはお許しください。



 「黄金の輝き」第3弾、
 今日はまず、沖永良部のユタのおばあたちが伝えてきた幻の音楽を、若い才能がよみがえららせたものから。



 沖永良部島の創世神話 島建てシンゴ

  シーサーズほか

  シーサーズによるオリジナル・アニメーション・ムービー付


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 ちょうど1年ほど前、沖縄国際シンポジウムで観て感銘を受けた、島建シンゴが、ムービー付のCDとして発売されたことを知り、早速購入した。
 これは、沖永良部島のすでに失われつつあったユタの呪詞を、シーサーズ他のメンバーが復元、作品化したもの。1年前の感動を、そのまま自宅で追体験できるのは、たまらなくうれしい。

 1年前のシンポジウムの記事(島建てシンゴのくわしい内容含む)は、こちら↓。


  組踊と創世呪詞~沖縄国際シンポジウムで沖縄伝統芸能の深層に触れる。


 全編30分にわたる長丁場、しかも、極めてシンプルな音、そしてイラストながら、始めから終わりまでまったくあきることがないばかりか、神話の壮大さ、美しさにただただ圧倒される。

 それにしても、クブタ、すごすぎ。
 ねずみのせいで、地の国の底で真っ黒になって打たれ死ぬはめになるのだが、復活するやいなや、「ああ、よく眠った」と、何事も無かったかのように、人間世界に見事農耕をもたらす。
 この強さ、屈託の無さ。大きな心。
 しかし、人々は、収穫の時に、ちがう神々に感謝の祈りを捧げる。
 クブタのことは、ひそかに限られた口から口へと伝承されてきた、ということなんだろう。

 クブタの島建ては、奄美や沖縄を超えて、はるか日本、中国にまで及ぶものだった。
 クブタがいっしょうめんめい創った国を、汚してはならない、そんなことさえ、あらためて思わせてくれる作品。



 以下、日本ポップスシーンの御大の作品。



 ぐすぺり幼年期

  あがた森魚


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 40周年、40枚目のアルバム、とのこと。

 単純計算では、これまでの40年間!どんな時も、だいたい1年に1枚は、宝物のようなアルバムを届け続けてくれた、ということになる。


 クレジットに記された、コーラスの名前の数多さに驚く。徹底したコーラス重視。
 そのコーラスがまた、明るく美しい。
 昨年デビューしたばかりのユニット「あがた森魚と山崎優子」の山崎優子さんが、ここでもコーラスに参加していて、(様々な楽器も担当)
 あがたさんとぴったり合ったパフォーマンスを聴かせてくれる。
 また、曲調もポップではじけているものが多く、歌詞も、「流行歌」本来のリズムに乗せた言葉遊びに立ち返ったような感じで、時には何言ってるのかほとんどわからない?のに、すさまじい説得力。
 時々、というか、かなり頻繁に、心の琴線に触れる言葉、フレーズが、唐突に飛び出してくる。

 つまりは、限りなく、ヴァージンVSを思わせる仕上がりで、わたしとしては、感慨に堪えない。

 
 ただ、ちがうのが、あがたさんの歌が、ヴァージンVSの頃の、正に輝くばかりだった、すさまじいまでに歌のうまい時期を経て、今や、力が抜けきっていて、これまたすごくいい感じ、ということ。
 こちらはデビュー当時の素朴な原点に立ち返った感があるが、それに加えて、今だからこその自由闊達の境地でもあるわけで、実に魅力的。

 そんなあがたさんの歌を支えるのが、上記したように、凝りに凝って作られたコーラス。
 さらにはあがたさんには珍しい緻密な多重録音までが多用され、それらが一つになって、ほとんど、対位法作品、バッハのカンタータみたいな感じになってしまっています。
 おなじみのバンドメンバーによる名人芸的即興演奏も、それに生き生きとした魅力を加えている。


 と、いうわけで、内容とともに、演奏までもが、「ぐすぺり幼年期」という言葉に象徴される、「過去」を、ノスタルジックな方向を見つめる作品ながら、今現在のあがたさんにしか表現できない、唯一無二の世界。
 最後の数曲、失われた過去の幻影が目の前に不思議なコラージュのように立ち現れる世界は、やはりすさまじい。40年の年月のみが、表現しうる境地。
 冒頭から繰り返し登場してきた、「ぐすぺりちゃん」のテーマが、懐かしくも壮麗な合唱に結実するあたりは、鳥肌もの。

 ただし、40周年記念盤にみなぎっていた気合、モニュメンタル感は感じられない。
 祭りの後、的な雰囲気だが、それがまた最高。
 あがたさんにとっては、それこそ日常の日記みたいな作品なのだろうけれど、それを大ベテランから若いスタッフまでがいっしょになって、あれこれ楽しそうに、しかしていねいに「アルバム」を造りあげているのがよく伝わってきてすばらしい。


 40年間に40枚、

 あがたさんが絶えず元気に活動していて、このように、その時点での日記のような歌を、わたしたちに届けてくれる。
 同時代に生きている幸せを、改めて感じさせてくれる一枚。


 あがたさんに関しては、今年は、「第七東映アワー」の復刻、昨年の40周年の伝説的ライブ(記事はこちら)のCD、DVDリリース、そして、まさかの「あがた森魚の世界史B」シリーズ続々リリース、と、とんでもないCDのリリースラッシュ!
 夢のような貴重音源、続々、
 ぜひ、この機会に!


 あがたさん、先日、NHKで放映されたドラマ、「実験刑事トトリ」にも、「妖怪人間ベム」に続いてのまさかの登場。
 (今回は、ベムのように重要な役ではなく、犯人の写真家が撮影していたモデル!で、目を疑ってしまった)
 このように意外なところで、お元気そうな姿を拝見できるのは、何よりもうれしい。



 架空映画音楽集Ⅱ ~エレホンの麓で~

  岡田徹


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 上の「ぐすぺり幼年期」の中で、純粋に「歌」として最も心に響いた作品の一つが、終盤の時空を超えた怒涛のコラージュ世界のまっただ中で、ひときわしみじみと歌われる、「そして船は行くだろう」でした。
 何ていい歌だろう、と思ってクレジットを見たら、やはり岡田徹さんが作曲した作品。
 これは、あがたさんも参加した岡田さんのニューアルバム、「架空映画音楽集Ⅱ ~エレホンの麓で~」の収録曲のカヴァー。

 ムーンライダーズが解散だか消滅だかした後、プロデュースを含めて精力的にアルバムをリリースし続けている岡田さんですが、「架空映画音楽集Ⅱ ~エレホンの麓で~」は、19年ぶりの自身の名義でのソロ・リリースとなる大作。
 各曲ごとにそれぞれ個性的な異なるアーティストとのコラボによる、ムーンライダースのセルフカヴァーを含む全13曲。コラボしているアーティストの中には元ムーンラーダーズのメンバーもいるので、当然ムーンライダーズ色が強い内容になっているのかな、と思って聴いてみたら、決してそんなことはなく、タイトル通り、インスト色の強い内容で、さまざまな映像が浮かんでは消え、浮かんでは消えていくような、ロマンあふれる仕上がりになっています。
 ムーンライダーズ名義の名曲を、極上のインストで聴けるのも楽しい。
 その中で、あがたさんとのコラボの「そして船は行くだろう」は、アルバムのラストにおかれ、さまざまなアーティストによるこの映像の万華鏡を静かに締めくくるような役割を担っているちょっとさびしい歌。
 「空の名前」からの流れが、すごすぎ。



 以上、日本、そして世界のポップスの大御所のCDをご紹介してきましたが、
 みなさん、そろってお年を召してきたけれど、この前ご紹介したジャズの方々ほど、神がかった境地には達していないようで・・・・。
 逆に言えば、バリバリに元気いっぱいで、何より。それがまた、妙に安心だったりする。




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