失われた金堂壁画を目の前で眺める至福~法隆寺 祈りとかたち展&別品の祈り金堂壁画展【ヨハネの祝日他】

 カンタータの世界では、夏の祝日が続きます。


 遅れてしまいましたが、昨日(6月24日)は、夏至の大祭、洗礼者ヨハネの祝日でした。

 初夏らしい飛びっきりの名曲が目白押し。

 第1年巻の、BWV167
 第2年巻の、BWV7
 そして後期、バッハの現存する事実上最後の教会カンタータ、大名作BWV30

 過去記事はこちら↓

 <洗礼者ヨハネの祝日>

    バッハの最後のカンタータは?その2(BWV30)
    始まりはいつも Overture(BWV7、167他)
    (参考資料) コラールカンタータ年巻 「始まりの4曲」 一覧
    お気に入りのアリア・ヨハネの祝日編 夏至の火祭・不思議なギター~BWV30
    長いお別れ・その1カザルス・ホール~BWV30で笑顔のさよなら。BCJ特別公演


 そして、今度の日曜日(6月29日)は三位一体節後第2日曜日。

 カンタータは、

 ライプツィヒ第1年巻、デビュー大作BWV75の勢いそのままのBWV76
 2年目、BWV2
 の2曲です。
 
 過去記事はこちら↓

 <三位一体節後第2日曜>

    始まりはいつも Overture(BWV2、76他)
    (参考資料) コラールカンタータ年巻 「始まりの4曲」 一覧
    三位一体節後第2日曜日(BWV2、76)


 さらに、月が変わって7月2日(水)は、おなじみBWV147が登場、マリアの訪問の祝日。

 初期の待降節用カンタータBWV147aを改作、ライプツィヒ1年目に初演したBWV147ももちろんいいですが、
 それに決して負けない第2年巻(コラール・カンタータ年巻)の大傑作、ドイツ語マニフィカト、BWV10も忘れてはなりません。
 第2曲アリアは、ひたむきな力強さを感じさせる、バッハが書いた最も美しいアリアの一つ。

 過去記事はこちら↓

 <マリアのエリサベト訪問の祝日>

    マリアとバッハ~はじめて聴くカンタータ
    アドヴェント・クランツのともしび(BWV36、61、62)
    クリスマスとバッハその2・風の中のマリア(BWV147、10)
    対位法とバッハ・その1?
    お気に入りのアリア5・ロマン風マリア(BWV10)



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 また、終わってしまった展覧会ですが。



 東日本大震災復興祈念&新潟県中越地震復興10年

 「法隆寺 祈りとかたち」

   @ 東京藝術大学大学美術館 ~6月22日(日)(この後、新潟県立近代美術館 開催)


 「別品の祈り 法隆寺金堂壁画」

   @ 東京藝術大学大学美術館陳列館 ~6月22日(日)


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 まずは、有料の法隆寺展から、かんたんなメモ。


 「法隆寺 祈りとかたち」展 @ 東京藝術大学大学美術館


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 大震災の復興祈念のため、法隆寺から、金堂の毘沙門天&吉祥天ご夫婦がお出まし。(春の仙台開催の後の今回の東京開催だった)
 それとともに、夥しい仏像や寺宝の数々が一堂に会し、思っていたより大規模かつ充実した展覧会だった。
 すぐそばにトーハクの法隆寺宝物館があるとは言え、さすがは日本人の心の故郷、法隆寺、これまで芸大美術館で観た展覧会の中では、最もにぎわっていたような気がする。


 金堂の国宝・毘沙門天&吉祥天立像は、これまで何度観たか記憶が定かではないが、そのあまりにも鮮やかな極彩色の装飾、そして観れば観るほど心が温かくなってくるような穏やかな表情に、びっくりする。
 薄暗いお堂では、絶対にここまで詳細に観ることはできない。

 その他の仏像も大充実。見慣れた方もいらっしゃったが、こんな方、どこにいらっしゃったのだ??というような方も。
 法隆寺、ほんとうに広く、大きい。(空間的にも、そして時代的にも)
 飛鳥風衣装を身にまとった素朴な体つきながら、顔だけ超劇画調鎌倉風の四天王像には、思わず目が釘付けになってしまった。これまで観た中で最も奇妙な仏像のひとつかもしれない。


 それと、やはり聖徳太子がらみの展示が圧倒的に多く、法隆寺は太子の御寺であり、日本の仏教の源流には太子という存在がいるのだ、ということを、改めて思い知らされた。


 圧巻だったのは、金堂壁画関連の展示。

 これは、並行して開催中の「別品の祈り 法隆寺金堂壁画」と合わせて一つの展示と言うべきだろう。

 日本の、いや世界の至宝とも言うべきこの「シルクロード絵画」は、すでに焼損してしまい、もう二度と古の姿に戻ることはないが、
 その在りし日の「面影」は、鈴木空如、焼損後の日本画壇を代表する画家たち、そしてそれにつらなる芸大関係者等による渾身の模写、さらには最新技術を駆使した復元などによって、いかに多くの、しかもそれぞれ個性的な形で、現代にまでしっかりと受け継がれていることか。

 この中では、今回は、焼損後の公式な模写画は観ることができなかったが、
 鈴木空如の模写は、実際にあの金堂の薄暗い明りの中で観る壁画そのもののような神秘感、臨場感、迫力にあふれ、
 さらに、最先端のデジタル技術に加え、東京芸大の壁画複製特許技術を駆使した原寸大復元は、実際にもほとんどこのようなものだったんだろうな、思わず息を飲むようなリアリティ。(こちらは「別品の祈り」展で展示)
 どちらも「本物」ではない、という考え方もあるだろう。
 しかし、どの形が「正解」か、などという問いは、もはや意味が無い。
 これらのありとあらゆる復元への挑戦、試み、それらを含めた一体的・総合的なものこそが、金堂壁画という偉大な文化遺産、芸術作品の、現代に生きる姿なのだ、ということに思い至った。



 写真撮影可だった、「別品の祈り 法隆寺金堂壁画」について、ちょっとくわしく。


 「別品の祈り 法隆寺金堂壁画」 @ 陳列館


 2階フロアに、在りし日の金堂内部を再現。

 フロア全体にきちんと朱の柱が並べられ、その間に、焼損前の写真等を基に、最先端のデジタル技術+東京芸大の壁画複製特許技術を駆使して精巧に復元された原寸大壁画が、実際の通りに配置されていて、感動的!

 実際のお堂と異なるのは、室内が明るい光に満たされていること。
 いや、ただ明るいだけでなく、天窓から差し込む自然光が例えようも無く柔らかでやさしく、光の世界を描いた壁画たちには、こちらの方がよりふさわしいのでは、と思ってしまった。


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 写真は、かなり大きなものが貼り付けてありますので、ぜひクリック&拡大の上、細部までご覧ください。


 正面向かって右側、第十号大壁・薬師浄土

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 正面向かって左側、第九号大壁・弥勒浄土

 全体的に、痛みが激しく、ぼんやりとしているが、よく見ると見どころも多い。

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 台座を支える邪鬼。

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 力士と獅子。

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 動物のかぶりもの?をしている。五部浄か。

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 お堂正面の両端。

 第十一号小壁・普賢菩薩坐像&第十二号小壁・十一面菩薩立像(写真右)

 第八号小壁・文殊菩薩坐像&第七号小壁・観音菩薩立像(写真左)

 普賢菩薩は象に乗っているが、文殊菩薩は、獅子に乗っていない。

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 普賢菩薩。

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 象。四本の足に蓮の花を履いて?波の上を走っている。
 鈴木空如の模写では、この象をはっきりと描きこんでいるのが印象的だった。

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 向かって左の壁、第六号大壁・阿弥陀浄土

 阿弥陀三尊とふわふわと浮遊するかわいらしい二十五菩薩が描かれている。金堂壁画を代表する名作。
 下部がぼやけているのが残念。

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 向かって右側の壁、第一号第壁・釈迦浄土

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 正面の反対側の両端。

 第四号小壁・勢至菩薩立像&第五号小壁・菩薩半跏像(写真右)

 第三号小壁・観音菩薩立像&第二号小壁・菩薩半跏像(写真左)

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 正面の反対側。

 赤く塗られた部分の木の質感など、本物とみまがうばかり。
 よく見ると、壁画が描かれていたのを塗りつぶしたかのようになっているので、実際のお堂もこのようになっていたのか、係りの人に聞いてみたら、遊び心でこのような形にしてみたとのこと。
 
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 みんな同じように疑問に思うらしく、次から次へと質問攻めにあっていた。
 ここまで忠実に復原空間を造り上げているのに、なぜ、ここだけ?と思ってしまった。
 柱をエンタシスにするなど、凝りに凝った展示スペースなのに、残念。
 また、終始流れ続ける重々しい音楽も、柔らかな光あふれる明るい空間と壁画自体の華やかさ、軽やかさに似合わず、わたしは、ちょっと邪魔だと感じた。


 なお、1階で映されていた映像作品もよかった。
 上の小壁の菩薩立像や半跏像は、同じ下絵を基にして描かれたと思われ、それを見事に証明する反転の検証にはびっくりしてしまった。

 なお、今回展示されていない内陣天井下小壁の天人画(焼損をまぬがれ、現存)も、同様の手法で描かれたと思われ、すべて同じ形とのこと。



 全体的に、法隆寺というかけがえのない日本人の聖地を、いろいろな角度から体験することができるすばらしい展覧会だったと思う。
 観ている人は、さまざまな機会に一度は法隆寺を訪れたことがある人が多いようで、ところどころで、心から懐かしむような感想があがっていた。

 正に、日本人の心のふるさと。


 最後にちょっと、気になったこと。

 混雑緩和のためか、東京芸大や近代美術の関わりのコーナーをじっくりと見せたいためか、理由はわからないが、第2章第3章のあとで、第1章を観せるように誘導していたのが解せなかった。
 これだと、せっかくのこの展覧会の最大の目玉のひとつ、金堂壁画関連の展示について、鈴木空如や東京芸大による模写を観た後、すぐ続けて陳列館の最先端技術による模写を観ることができず、両者を詳細比較したり、上記したような、あらゆる模写すべてをまるっと含めての、「法隆寺金堂壁画」という作品のすごさを思う存分体感することが、少々困難になってしまっていた。
 その貴重な体験が可能だった希有の展覧会だっただけに、これは何とも残念。



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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

ANNA
2014年06月29日 00:55
Noraさん、こんばんは。

この時期、初夏のカンタータいいですね。大好きです。
BWV167のソプラノとアルトのデュェット、陽が差したり、翳ったりというような
なんとも言えない美しさがいいです。曲中で転調があるのかどうか分かりませんが
一瞬のうちに音楽の色合いが変わるような感じ....グラデーションに惹かれます。

ところで、真央ちゃんですが7月5日の「世界不思議発見!のミステリーハンターを務められるのだそうですね。放送開始以来、毎週楽しみにしている番組に真央ちゃんが登場してくれて、とてもうれしい!楽しみです


2014年06月30日 10:40
 ANNAさん、こんにちは。
 BWV167のデュエット、いいですよね。おっしゃる通り、移ろいやすい今頃の夏の日差しのようです。中間部の対位法的な部分もたまりません。
 BWV167は、バッハがライプツィヒ・デビューの際に気合の入った大作を立て続けに作曲上演した後、連続する祝祭日をクリアすべく、ふっと力を抜いて一筆書きのように書き上げた小規模な曲の一つです。
 同じような性格のBWV24と同じく、かえってバッハの真摯な魅力がストレートに出ていて、目立つ曲ではないけれど魅力的だと思います。冒頭のシチリアーノやおしまいのリトルネッロ主題付のコラールも最高です。
 ちなみに、このコラールに印象的なリトルネッロ主題をからめる手法はBWV24にも共通していて、それがこの後のBWV147に結実します。(BWV147の原曲はヴァイマール時代に作曲されていましたが、あの有名なコラールはこのライプツィヒ時代の上演時に付け加えられたものです)
2014年06月30日 10:58
 来週の「不思議発見!」、楽しみですね!
 わたしも前回の慶良間諸島の回を観ましたが、「ミステリーハンターの浅田真央です」と言ってはりきっていて、意気込みが伝わってきました。音楽にも深く係るテーマのようで、そういう意味でも楽しみです。

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