メシアンの若気の至り?カンブルランのトゥーランガリラ(読響第543回定期)~絵画的音楽と音楽的絵画1

 今回も、紅葉とイルミの写真付。
 まずは、この前の記事の10日後、12月の赤塚植物園から。


画像



画像
画像




 一方こちらは、アークヒルズ、ANAインターコンチネンタルホテルのイルミ。
 

画像




 12月4日(木)



 第543回定期演奏会

 酒井健治 ブルーコンチェルト(読響委託作品・世界初演)

 メシアン トゥーランガリラ交響曲


  アンジェラ・ヒューイット(p) * メシアン
  シンシア・ミラー(オンド・マルトノ) * メシアン
  シルヴァン・カンブルラン指揮、読売日本交響楽団


画像




 カンブルランについては、昨年「春の祭典」を聴いて、その圧倒的なオーケストラのドライブ技術にすっかり魅了されてしまい、何か他の曲のライブも聴いてみたいものだと思っていました。(できるならば、CDで感銘を受けたブルックナー!)
 この度、そのカンブルランが、西洋音楽史上最も色彩的な大管弦楽を誇る大曲、メシアンのトゥーランガリラ交響曲を指揮するというので、とるものもとりあえず行ってまいりました。



 まずは、そのトゥーランガリラ交響曲の感想から。


 一言で言って、稀有の体験だった。

 指揮者の周囲をピアノ、オンド・マルトノ、チェレスタが取り囲み、後方にはどのように演奏するのかさえよくわからないような珍しい打楽器群がずら~~っと並んで、その間を3管編成の巨大な管弦楽が埋め尽くしている。
 その普段はなかなか見ることもできないような大楽器群を、まるで、自らの手足であるかのように自在に操るカンブルラン。
 圧巻!

 これまで聴いたことも無いような響きが続出。
 曲が進むにつれ、各楽器の響き、ブレンドの妙はどんどん研ぎ澄まされていき、響きの不思議さはますます増してゆく。
 
 さらに、カンブルランは曲の構成を100%自分のものとして、決然と、そして明確に音楽を進め、ソリスト&楽団もそれに見事に堪えているので、まるで豪華絢爛な絵巻物を観ているようなぜいたくな楽しさがある。

 音の大パノラマ、こんなにも色彩的な音楽が他にあっただろうか。
 その虹色に輝く音の渦に身を任せるだけでも、出かけた価値は十二分にあった。


 トゥーランガリラ交響曲そのものについて、率直に感じたことも少々。

 この曲、いくらなんでも長すぎ。
 連れは、第6楽章「愛のまどろみの園」のところで力尽き、実にタイミングよく、気持ちよさそうにまどろんでいた。
 わたし自身も、上記した通りの色彩的な音の渦に飲み込まれ、そのまま果てしない時間を翻弄され続け、気が付いたら終わっていた、というのが実際のところ。

 思い返してみて、結局、心に焼きついているのは、メシアンの当初の構想にあったという、4つの「交響曲」としての楽章。
 すなわち、第1楽章・イントロダクション、第4楽章・愛の歌2、第6楽章・愛のまどろみの園、第10楽章・フィナーレ。
 このうちの第1楽章、第6楽章、第10楽章に、最終的には第5楽章・「星たちの血の喜悦」が加わって、その4つの楽章が、バラエティ豊かな3つの「愛の歌」と3つの「トゥーランガリア」をはさむ骨格楽章となっている。
 わたしは個人的には、むしろこの骨格だけで十分のような気さえした。
 これだけで、急・舞・緩・急の見事でひきしまった構成の音楽になる。ちょうどいい長さの。
 それに、この第5楽章というのも、鮮烈なリズムにあふれ、実によいのだ。
 
 メシアン、若さゆえの情熱(40代に入った頃)と天才ならではのひらめきをもって、その基本形の骨格に、これでもか、これでもか、と、さまざまな要素を肉付けしてゆき、その結果、当初の構想は限りなく膨れ上がって、とんでもないマンモス作品、しかもカオス的なごった煮作品が誕生してしまったわけだ。

 宗教的な雰囲気の部分があるかと思えば、官能にむせかえるような部分もある。
 サスペンス、恐怖映画風な雰囲気の後には、歴史大河ドラマ風な雰囲気。
 ガムラン、東洋音楽、その他の民俗音楽風な響きと、ニューヨークの都会を連想させるようなポップな曲想とが交代し、さらには突如ヨーロッパ南仏の明るい空気が感じられたりする。
 メシアンの引き出しの多さに驚くとともに、これだけのものをよくぞ見事にまとめあげたものだ、と、改めてカンブルランの手腕に驚嘆。



 トゥーランガリラ交響曲は80代まで生きたメシアンがまだ40代になったばかりの頃の作品だが、

 こちらもまだ30代の若い作曲家、酒井健冶さんのブルーコンチェルトについても。


 メシアンへのオマージュであるとともに、個人的な追悼の音楽でもあるらしい。
 これまでの主要作品の引用も行い、総決算的な意味合いを込めて作曲した作品とのこと。

 オンド・マルトノなどは使用されていないものの、打楽器を始めとする不思議楽器の数は、トゥーランガリラよりもさらに増え、各楽器の響きのブレンドの妙は、よりいっそう幅広いものになっていた。
 ただし、無調の度合いが増し、追悼音楽という性質上響きはほの暗く、その分真摯でもある。
 それにしても、オマージュという要素があり、自作からの引用が含まれるとは言え、何もない状態からこれだけの作品を生み出す作曲家、それを現実の確固とした音として響かせる指揮者と楽団員、
 すなおにたいしたもんだと感動してしまった。
 それだけ、一つの「作品」として完成していた、ということ。



 <参考>


 * ブルーコンチェルトで使用された打楽器群

 大太鼓、シンバル、サスペンデッド・シンバル、ハイハット、小太鼓、ロドグラム、木鉦、ウッドブロック、ポリブロック、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン、チューブラーベル、クロタル、鉄板、鍵盤ハーモニカ、ウォーターフォン、トライアングル、フレクサトーン、スプリングコイル、ボウル、金床、ホース、サンドペーパー、ラチェット、タムタム


 * トゥーランガリラ交響曲で使用された打楽器群

 大太鼓、シンバル、サスペンデッド・シンバル、チャイナ・シンバル、ターキッシュ・シンバル、タムタム、小太鼓、プロヴァンス太鼓、タンブリン、テンプルブロック、ウッドブロック、マラカス、ヴィブラフォン、チャイム、鐘



 と、いうわけで、基本的には貴重な体験をすることができて、大満足のコンサートだったのだが、一つ残念だったのが、わたしたちの席が最前列で、オケの一番前の人たちの姿しか見えず、せっかく珍しい打楽器等がたくさん登場しているというのに、それらが演奏されているのをほとんど見ることができなかったという点。

 ブルー・コンチェルトでは、終盤の大詰めで、ホースを宙高く振り回しているのが、かろうじて見えた。振り回す長さや高さ?で、音が見事に変わるのがわかっておもしろかった。他の楽器も見えていたら、どんなにか楽しかったろう。

 しかし、何も見えないところから、どうやって出しているのか見当もつかない妙な音が、次々と響いてくるというのも、なかなか不思議な感じで、印象的だったとも言える?


 一方、打楽器等がほとんど見えなかったかわりに、ピアノとオンド・マルトノ、指揮者はやたらよく見えた。

 ピアノもオンドマルトノも、代役での参加だったが、どちらもさすがにこなれていて、あくまでもオケの一員として見事な演奏を聴かせてくれた。


 オンド・マルトノを生で聴いたのはたぶん初めてだと思うが、その独特な演奏法もじっくりと観ることができた。
 基本的には、ピアノのように鍵盤を弾いて個々の音を出すが、鍵盤の一部(リボン)に置いた手をスライドさせることによって、グリッサンド奏法も可能なのが、最も大きな特色。
 休憩時間にオンド・マルトノ本体もよく観察したが、鍵盤の横に、たくさんのつまみのある小箱(引出)がついていた。
 演奏のシンシア・ミラーさんは、とても冷静に、鍵盤を弾きながら、常に左手でそのつまみを操作しており、それによって音色の変化をはじめ、さまざまな独特の効果が得られる。

 総じてCDで聴いていたよりも音色が柔らかに感じられる部分が多かったが、電子楽器のこと、これはもちろん位置的なこともあるのだろう。


 現代最高のバッハ弾きの一人として世評の高いヒューイットを、生で聴くことができたのも大きな収穫だった。これも初めて。

 見た目は、すごく庶民的なイメージ。何だか、大阪のおばちゃんみたいに親しみやすい雰囲気。
 音楽も、ある意味すごく「庶民的」で、無調の現代音楽が、とんがっているはずの音楽が、あたりまえの聴きなれたピアノ名曲のように響く。
 実は、これはとんでもくすごいことで、作品を完全に自分のものにしている証しとも言える。  ヒューイットのバッハの評判がよい秘密もこのあたりにあるのかも。

 また、ヒューイットは、指揮者を通り越して、楽団員とさかんにアイ・コンタクトをしまくって、演奏をしていた。ピアノと大管弦楽が室内楽的とも言える繊細さでひとつに溶け合っていたのは、このおかげかもしれない。

 さらに、ヒューイットは、タブレットを譜面台に置いて、それで楽譜を見ていた。
 どうやってページをめくっていたのか結局はわからなかったが、万が一フリーズしてしまったり、ちがうページが開いてしまったりした場合は、取り返しがつかないような気がするが・・・・。


 カンブルランの指揮姿は、いつも通り、明晰かつ情熱的。指示が細やかで、文字通り、オーケストラ全体を自分の手で「弾いている」ようなイメージ。
 トレードマークのちょい悪風なポニーテール?はまったく変わらず。



 そのカンブルラン、来年度の読響定期(第547回)およびオペラシティ名曲シリーズで、ついに、ついに、待ちに待ったブルックナーを振る!

 しかも、大名曲、7番

 その豊かな色彩感覚、強固で明確な構成感、そして何よりもあふれるような情熱によって、果たしてどのような新しいブルックナーを響かせてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。


 そして、読響の魅力あふれるラインナップの中でも特に注目なのが、ヴァンスカのシベリウス。

 1番、あるいは2番と交響詩、協奏曲をやるプログラムもよいが、
 特に、5番、6番、7番をいっぺんにやる第553回定期は、シベリウスファンにとって、盆と正月とクリスマスがいっぺんにやって来たような一夜になるはず。
 かつてのセーゲルスタムの奇跡の再現なるか??



 サントリーホール周辺のイルミ等


画像



画像
画像



 ANAインターコンチネンタルホテル東京のツリー

画像




 カンブルランのコンサートに行った週の週末には、再び赤塚植物園を訪れた。


 前回訪れた時から、10日経った様子。


 風景は、劇的に変化している。

 冬支度の植物園。気温は明らかに下がっているのだが、何だかやさしい温もりみたいなものを感じる。


画像
画像



画像



 コメダまで足をのばす。


画像
画像



 クリスマスの準備中

画像




画像






そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

画像





この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

過去ログ

テーマ別記事