陳舜臣さんを偲ぶ

 本日、小説家の陳舜臣さんが亡くなりました。90歳でした。

 「小説十八史略」によって古代中国史のおもしろさを教わり、わたしにとって、三国志と言えば、何よりもまず「秘本三国志」でした。そのため、現在にいたるまで曹操贔屓です。

 「阿片戦争」では、今度は近代中国史を教わり、わたしが近代政治思想史を学ぶきっかけの一つになりました。
 滅びゆこうとしている中華巨大帝国と、圧倒的な文明力を背景に自国の利益のためには手段を選ばない列強各国。
 「阿片戦争」は、日本の幕末とも通じるところの多い清朝末という激動の時代を描いた超大作。
 雄渾な歴史叙事詩であるだけでなく、正に内憂外患、四面楚歌の状況の中、林則徐という一人の政治家が、どのように未来への活路を見出そうとしたか、それを実に丁寧な筆致でしっかりと描き切った人間ドラマであり、今でもわたしにとって大切な小説の一つです。
 その後の「太平天国」等を、単行本になるのを心待ちにして、夢中になって読んだことを思い出します。
 その他、「風よ雲よ」「旋風に告げよ」(「鄭成功」)、インド三国志シリーズなどなど、どれもおもしろく、アジアと日本のつながりを感じることができた。
 沖縄を深く愛する者としては、「琉球の風」を書いてくれたのも、うれしかった。

 また、陳舜臣さんは、「耶律楚材」「諸葛孔明」などの作品を読めばわかるように、
 乱世の名だたる英雄豪傑たちではなく、その傍らにいて、常に豪傑たちの暴走を抑え、戦いを必要最小限に平和的解決の道を模索し続けた存在にこそ、あたたかく共感に満ちたまなざしを向けた人でもありました。

 以上のように、歴史小説家として大きな足跡を残し、多くの新たな歴史観を打ち出した陳さんですが、初期のミステリーなども読みやすくてとてもおもしろく、エンターティンメントの面でも一流の人だったと思います。

 心よりご冥福をお祈りいたします。





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