あふれる滋味と若く清新な波動の交感!ピリス&小林海都師弟の奏でるベートーヴェン

画像




 10月29日(木)    @すみだトリフォニーホール


 パルティトゥーラ・プロジェクト

 ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲演奏会 (第2回)

 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番、第5番、ロマンス

  ピリス(4番)、小林海都(5番)、
  オーギュスタン・デュメイ指揮(&ヴァイオリン)、新日本フィルハーモニー交響楽団


画像



画像



画像



 ベルギーのエリザベート王妃音楽院が主体となり、同音楽院を活動拠点として教鞭もとっているピリスの音楽的ポリシーに基づいて、ヨーロッパ各地で展開されているパルティトゥーラ・プロジェクト。
 ピリスを中心に、若い世代のさまざまなアーティスト、そしてライブに参加する聴衆が協調して生きた音楽をつくりあげ、ともにライブの輪を広げてゆくプロジェクトということのようだが、その日本での初コンサートが、このベートーヴェン連続演奏会。

 コンクールや分析的なアカデミズム主導の「スターシステム」、演奏する側も聴く側も飛び抜けた存在だけを称賛するという現代の風潮に背を向け、演奏家同士、さらに演奏家と聴衆の精神的なふれあいであるコンサートという場で、音楽の真の意義を追及しようというもの。
 従って、最低限そのようなプロジェクトの主旨を念頭に置いて、演奏に接することが大切だと思った。
 普通のスター演奏家同士が共演するコンサートと、根本的に意味合いがちがうのだ。


 大曲が並ぶ第2回に行ってみました。



 浅田真央さんの2013-2014シーズンのショートプログラム「ノクターン」、
 その音楽と舞踏とスポーツの技が混然一体となった「総合芸術」で、大きな役割を担っていたのが、ピリスの弾くノクターンだった。

 さやかな微光を放つような美音とこぼれんばかりの詩情、ゆったりとして呼吸の深いテンポ、真央さんの演技、技と限りなくシンクロする、浅田真央さんの「ノクターン」にはもうこれしかありえない見事な演奏。

 一度、そのピリスのピアノを生で聴いてみたいと思っていたのだが、ちょうど良い機会が訪れたことになる。



 そのピリスは、第4番を担当した。


 想像をはるかに上回るすさまじいピアノだった。

 妖しく美しく光り輝くピアノの音。「微光を放つ」どころではなく、虹色に光り輝いている。
 打鍵楽器からなぜこのような音楽が流れ出てくるのか不思議なほど、メロディ、モチーフ、ともになめらかに流れ、歌い、自然にゆらいで、連なってゆく。
 それらのすべてのメロディ、モチーフはくっきりと際立ち、波のように寄せては返し、寄せては返す。互いに交差して、どこまでも広がってゆく。
 そして驚くほどスケールの大きなテンポ。深い呼吸。けっしてテンポが遅いわけではなく、むしろ快速なのに、とにかく呼吸が深いのだ。

 少し前の記事で書いた、「ルードウィヒ・B」の、ベートーヴェンが作曲したばかりの月光を弾くところ、月光がこの世に鳴り響いた瞬間を視覚的に描ききったファンタジーにあふれるシーン、そのほとんど手塚さんの絶筆になってしまったシーンを、実際に眼前に「視る」思いだった。


 ただ、ピリスのピアノがあまりにもすごいので、オケとの「協奏」と言う点では、どうしてもしっくりこない部分もあった。
 オケも、ピリスの神がかった演奏に応えようと、デュメイさんの指揮の下、渾身の演奏を繰り広げるのだが、4番という曲は、ピアノとオケの渾然一体となった協奏が何よりも大切な曲なので、特別難しい。

 オケが気持ちを込めて演奏すれば演奏するほど、それぞれの部分部分の曲調が際立ち、つながりが悪くなり、やや唐突な感じに聴こえてしまう場合もあった。
 この演奏会の数日後、NHK音楽祭のペライアとハイティンクの4番をTVで聴いたが、そこでの「協奏」は圧巻だった。ピアノとオケが一つの楽器みたいに溶け合っていたのだ。

 とは言え、新日本フィルの演奏にも、ところどころハイティンク&ペライアの熟練の演奏に迫るか、あるいは上回るほどの、思わずドキっとさせられるような瞬間もあり、これもまたパルティトゥーラ・プロジェクトの成果なのかもしれない。
 もちろん、TVの演奏と生演奏を単純に比較すべきではないけれど。 



 一方、ピリスの愛弟子、今年20歳の小林海都くん。

 こちらが天下の大名曲、第5番「皇帝」を担当。


 もちろん、深みという部分では師匠のピリスにはまだ及ばないが、師匠譲りの虹色の美音で、颯爽と弾きまくる。
 あらゆるケレンをヌキにした、どこまでもまっすぐな直球勝負。
 オケもそれに応え、互いが互いを高め合って、協奏曲の醍醐味が炸裂。これが音楽の不思議なところ。
 5番は、曲自体のエンターティンメントな出来栄えも圧倒的なので、文句なしにすごい演奏になった。これこそが、ベートーヴェンの力。
 まっすぐとまっすくがぶつかりあって、そのベートーヴェンの力がまっすぐに引き出された。それは、海都君と新日フィルの力。


 5番は、青春の音楽だと思う。特に、第2楽章の歌など。そういうこの音楽の最も大切な一面が、心にストレートに飛び込んでくる演奏だった。
 終演後には、ピリスの演奏に迫る、大きく熱い拍手。
 海都君にとっても、かけがえの無い貴重な経験になっただろう。
 海都君の今後に大いに期待したい。



 アンコール、ピリスと海都君の文字通り「協奏」のモーツァルトの4手のソナタは、以上二つの演奏に聴かれた、二人のピアニストのあふれる滋味と若い清新な波動とが見事に一つに溶け合った、心にしみる演奏となった。
 これらすべてを包み込むところが、モーツァルトの懐の深さだろう。



 そうそう、デュメイさんの弾き振り、2曲のロマンスも、ぜいたくで幸福な贈り物だった。



 それにしても、デュメイさんとピリスさんが並ぶと、あまりにも背の高さが違うので、ロード・オブ・ザ・リングのガンダルフとフロドみたいだった。
 デュメイさんがものすごく背が高いというのもあるが、それにも増してピリスさんが小さい。
 その体のどこから、あんなにもすさまじいエネルギーが放出されるのだろうか、と、不思議に思えるほどだった。



画像



画像
画像




画像



画像
画像



画像




画像




画像





 錦糸町に行く途中、

 飯田橋や御茶ノ水でのスナップ。


 パックン(とマックン?)が、路上漫才をしていて、大爆笑だった。

画像
画像



画像



画像
画像




 購入したCD。

 若さあふれるハーディングとの、見事な「協奏」が聴ける。

 ここに聴くピリスのピアノもとんでもなくすごいが、それでも実演の驚くべき境地は伝えきっていない。

画像


 ライナーのページをめくったとたん、涙があふれそうになった。

画像






そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

画像





この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

過去ログ

テーマ別記事