♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS 源氏物語で奏でられている音楽を聴く〜春を呼ぶ舞楽、春鶯囀 @国立劇場

<<   作成日時 : 2016/03/21 21:14   >>

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「やうやう入り日になるほど 春の鶯囀るという舞 いとおもしろく」

                                     「源氏物語」 「花宴」の巻より



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 2月27日(土)


 国立劇場 第78回舞楽公演

 振鉾、長保楽、春鶯囀

  宮内庁式部職楽部

  @ 国立劇場大劇場


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 以前2年越しで観た大曲・蘇合香は、舞楽界のロ短調ミサ曲とも言うべき、舞楽の様々な要素を内包するような大曲中の大曲だったが、
 今回のメイン、春鶯囀は、同じく大曲ながら、始めから終わりまで、正しく鳥のようにただひたすら春の喜びを歌い上げる、あたかも春のカンタータのような作品。
 同時に上演された長保楽も同様の純正統的な舞楽なこともあり、どこまで同じことを繰り返せば気が済むんだ、と思わないでもなかったが、折しも春を待つ今の季節にはたまらないところもあった。
 春鶯囀は、源氏物語や枕草子にも登場する名曲だという。紫式部や清少納言が聴いたのと同じ音楽を聴き、舞を観て、春を迎える精神の贅沢!
 日本人であることが誇らしくなる瞬間。



 振鉾(えんぶ) 一節、二節

  左右兼帯(一曲の中に左方唐楽と右方高麗楽が含まれる形式)


 一節では、唐楽の「小乱声」、「新楽乱声」、二節では、高麗楽の「高麗小乱声」、「高麗乱声」が演奏される。
 乱声とは、笛太鼓と鉦鼓のみで奏される特殊な楽。つまりリズム隊と笛だけの編成。

 ふつう二節だけが舞われるが、「振鉾三節」として舞われる場合は、一節と二節で別々に舞った二人が同時に舞台に上がり、さらに何と、「新楽乱声」と「高麗乱声」が同時に奏されるのだという。
 これはこれで見てみたかった気がする。

 周の武王が殷を滅ぼした際に、左手に黄金の鉞、右手に白髪のついた旗を持ってその後の天下泰平を誓ったことに由来する舞で、舞楽が奏される時にそのはじめに儀礼的に舞われることが多いとのこと。


 鉾を持った勇壮な舞。一節・二節、どちらも短い舞いながら、音楽、衣装や鉾の色彩、踊りのフォーメーション等すべてが異なっているのがよくわかり、緊張感があふれ、すばらしかった。
 乱声の独特の響きはものすごくモダン。



 長保楽(ちょうぼうらく) 破、急

  右方高麗楽の平舞


 「保曽呂久世利」(ほそろくせり)(=破)と、「加利夜須」(かりやす)(=急)というもとは別々の曲を、一つの曲としたまとめたもの。
 従って、調子も異なるものが用いられている。 

 長保年間に一曲にまとめられたので、「長保楽」と呼ばれるとのこと。他に泛野楽とも呼ばれるが、その理由は不明とのこと。
 一対の獅子(かつては獅子と熊だったことも)が向き合った円状の刺繍が施された蛮絵装束で舞われる。
 平安時代の衛府の官人の正装がそのまま舞楽装束になったものだそうで、ということは、仕事着のまま舞っていたということだろうか。


 調子の異なる別々の曲ということだが、音楽のモチーフ(舞楽でとてもよく聞く音型。西洋音楽のロムアルメ音型を連想させるのがおもしろい)がよく似ていることもあって(似ているから組み合わされたのかもしれないが)、それほど劇的に変わったようには感じられなかった。

 
 黄色、萌黄色、縹色を中心にした春らしいさわやかな衣装で舞われる優雅な舞。実に春らしい。
 しかし、変わったお面や小道具が使用されるわけではなく、ハデなアクション等も無いので、わたしのような素人には少し単調に感じられてしまった。十分雅やかではあるのだが。


 
 大曲 春鶯囀(しゅんのうでん) 一具 

  〜遊聲(ゆうせい)、序、颯踏(さっとう)、入破(じゅは)、鳥聲(てっしょう)、急聲(きっしょう)

  左方唐楽、「四箇大曲(しかのたいきょく)」の一つ。


 唐楽の四箇大曲は、複数の楽章から構成される文字通りの大曲を指す。クラシックで言うシンフォニーのようなものか。
 この「春鶯囀」の他、「皇帝破陣楽」、「団乱旋」、そして「蘇合香」もこれに含まれる。
 古よりこれらについては、「皇帝破陣楽」は管、「団乱旋」は絃、「蘇合香」は打物、「春鶯囀」は舞を、それぞれ秘さねばならないとされ、そのため「春鶯囀」も、久しく一具として舞われることが途絶えてしまっていた。江戸時代に一度再興されたものの、その後わずかしか上演されることは無かったとのこと。わたしが以前からいつも参考にしている別冊太陽「舞楽」(構成・遠藤衛 2004年、平凡社刊)にも、春鶯囀は管絃の曲として紹介されている。

 今回の上演、一具上演としては、明治以来の久々の上演となった昭和42年の上演から、さらに何とおよそ50年ぶりになるそうだ。
 ただ一度きりの上演のために、とてつもない労力をかけての今回の舞台だったと思うが、50年ぶりということは、ここでやっておかなければ春鶯囀は再び歴史の渦の中に失われてしまう可能性があるということだ。
 このような努力の積み重ねがあってこそ、おそらく実際に耳にすることができる世界で最も古い音楽、2千年を超える舞楽の伝統がさらに引き継がれていくのだろう。
 今回の上演によって、「源氏物語」や「枕草子」にも登場するというこの春鶯囀というかけがえの無い文化遺産が、今後50年、100年と生き続けることになる。


 この曲は、唐の高宗が自明達に鶯の声を写させ、作曲させたと言われる。(あるいは太宗がつくらせたとも)
 日本には、文武天皇の頃(7世紀)に遣唐使の粟田道麿が伝えたとされる。
 時代は下って9世紀頃、尾張浜主が百十五歳で見事に舞い、そのすばらしさに仁明天皇自ら長寶壽楽と名付けた、というおめでたい記録もある。
 中国では立太子の際にこの曲を奏すると、鶯が百囀すると言われ、日本でもその例にならって度々立太子の礼で舞われ、十人の女性によって舞われたこともあるとのこと。

 何よりもこの曲に関しては、源氏物語と枕草子に出てくるというのだから、驚かされる。
 そんな曲を実際に聴くことができるなど、普通ではとても考えられない。日本の伝統のすさまじさを思い知る。
 源氏物語には、「花宴」の巻に「春の鶯囀るという舞」とあり、その他、「少女」の巻において、冷泉帝が朱雀院行幸を行った際、源氏、帝、院が歌のやり取りをする場面でも登場する。
 枕草子には、「弾く物は」の段に、「弾く物は琵琶。調べは風香調。黄鐘調。蘇合の意。鶯のさへづりといふ調べ」とある。
 源氏物語では舞とあるのに対し、枕草子では調べとあり、しかも、音楽的なことがやたら書いてある。清少納言は、音楽好きだった?? 


 以下、実際に観たイメージ。

 舞人たちの装束、楽人たちの装束、それから舞台そのものも、すべて鮮やかなオレンジを基調にした色彩に統一されていて、実に暖か、春らしい。

 (壱越調調子)

 音取。
 メシアンのオルガン曲みたいな笙の静謐な和音。それをベースに、篳篥の春らしいのびやかな旋律が奏される。何て気持ちがいいんだろうと思って聴いていると、一気に笛が加わってきて、あたかも鳥たちがいっせいに鳴き始め、鳴き交わすようになり、いきなり音楽は途絶える。

 (遊聲)

 再び、鳥たちの声を思わせる笛の音の不思議な交錯。それに乗って、目にも鮮やかな6人の舞人が悠々と入場。

 (序)

 オルガンのような和音にのせて、篳篥がユニゾンでゆったりとした息の長いメロディを奏でる。春の情景。
 そのはるか上方を、笛が春風のように吹き渡る。時には篳篥に合わせ、時にはまったく自由に。正に不思議な風音のような響き。時々即興のように奏でられるキラキラとしたフレーズは、鶯の声だろうか。
 こののどかな情景と連動するかのように、舞もまだゆるやか。

 (颯踏)

 和音もメロディもよりくっきりと際立ち、鳥たちも賑やかになってくる。
 舞もそれに合わせて動きが大きくなってくる。

 (入破)

 リズムも激しくなってきて、ついに、キャッチーな「ロム・アルメ」(に似た)音型登場!
 キャッチーな旋律が繰り返される。

 (鳥聲)

 リズミカルな間奏的な短い楽章?

 (急聲)

 再び、ものすごくインパクトのある「ロム・アルメ」音型登場!
 すさまじいビート。
 太太鼓を始めとするリズム隊のビートに合わせ、すべての楽器がアクセントをつけ、ビートを刻む。それに合わせ、舞人たちも躍動する。
 リズムの祭典。笛は上へ、下へときらめくように駆け回り、鳥たちの饗宴もクライマックスになったことを告げる。

 (壱越調調子)

 入調。
 現代音楽、あるいはフリージャズみたいな楽器の交感。舞人たち退場。

 以上、記憶を頼りに音楽と舞の感覚的な流れを書いてみましたが、タイトルと内容は、もしかしたら根本的に符合していないかもしれません。
 あくまでも、個人的なメモ、ということで。 

 

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 梅の国立劇場


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 国立劇場は、近代日本画のミニ美術館でもある。

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 新派の華 −面影と今日−

  @ 伝統芸能情報館 情報展示室


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 寄席の四季 −冬から春へ−

  @ 国立演芸場 1階 演芸資料展示室


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 三遊亭遊三師匠の色紙もあった。あいかわらず芸達者。すばらしい!

 お元気でいらっしゃるだろうか。

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 周辺の建築

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 今、「ちかえもん」ロス状態。

 このポスターを見ただけで、ジーンと目頭があつくなってしまう。

 これは行かねば!入門させていただきます!

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