お気に入りのアリア・復活節編 春はたそがれ~BWV6、42ほか

 復活節のカンタータのつづき。


 春はあけぼの、と言いますが、
 わたしは、春のたそがれ時も大好きです。
 独特の、夕べの香気、みたいなものが感じられるからです。

 そして、そんな春の夕べの香気に通じるような、「しっとりとした情緒」も、
 復活節カンタータの大きな魅力のひとつです、

 そう言えば、前回、BWV13466のオススメ盤としてあげた、リリング盤やヘレヴェッヘ盤で聴ける演奏も、これらの曲の、底抜けに明るい曲調に、しっとりした情緒を加味したようなものでした。

 マタイの終盤、イエスが亡くなった後、音楽に突然得も言われぬ香気のようなものが漂い出すのは、よく指摘されることです。

 復活節カンタータの「しっとりした情緒」は、その香気のようなものをそのまま引き継いだもの、と、言ったらよいでしょうか。
 実際に、あの美しい復活節のカンタータたちを、一度でも聴いたことがある方なら、すぐにわかっていただけると思うのですが。


▽ 伊藤若冲 「動植綵絵」より、しっとりと美しい春の絵
  芍薬群蝶図(左)、桃花小禽図(右)

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 「しっとりとした情緒」を感じさせる復活節のカンタータ。
 まず真っ先に思い出すのは、何と言っても、名品中の名品、

 BWV6 「我らとともにいてください、もう夕べも近いので」

 1725年、2年目の作品。
 本来、コラールカンタータであるべきところなのですが、
 何度も書いているように、この曲から、突然コラールカンタータでなくなり、
 今後は自由な作風へと変貌していきます。その第1作。

 受難曲の終結合唱を思わせる大合唱曲のあと、
 それこそ「しっとりした」ヴィオロンチェロ・ピッコロのオブリガート付コラール、
(これも、後にシュープラーコラール集に編纂された名曲です)
 2曲の美しいアリアが続きます。

 愛らしい第3曲アルトアリア
 真摯な第5曲テノールアリア、(こちらは短調)
 どちらも、春の夕べの美しさをそのまま映しだすかのような名アリア。


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 CDは、ガーディナーCDGシリーズの最新盤。(復活節カンタータ集)
 この格調高い大作は、ガーディナーのこれ以上ないくらい真摯な表現で。
(このCDセット2枚組みで、復活節カンタータのほとんどを聴くことができます)

 なお、第3曲コラールのヴィオロンチェロ・ピッコロを聴くなら、やはりコワンでしょうか。



 さて、BWV6と並ぶ続く、名品をもう1曲。

 BWV42 「この安息日の夕べに」

 これは、厳密には、1725年、BWV6のすぐ翌週、復活節後第1日曜日に上演されたものですが、
 復活節がらみ、ということで。

 前回、BWV13466について、「聴いたことないコンチェルト」という風に書きましたが、
 「聴いたことないコンチェルト」と言えば、BWV42のシンフォニアなど、正に、その代表例。

 春の喜びを高らかに歌いあげる、この器楽のコンチェルト楽章は、バッハの器楽曲の中でも最高レヴェルのものだと思います。

 バッハの器楽曲がお好きな方で、この曲を聴いたことが無い方は、絶対にお聴きになってみてください。

 それにしても、これまで頑なにコラール・カンタータを作り続けてきたバッハが、
 早くもこのような曲を冒頭に置くようになってしまったわけで、この変化には驚くばかりです。
 
 幸福なことに、このシンフォニアには、ヘンゲルブロックの超名演があります。
(録音はシンフォニアだけ)

 このシンフォニアに続く、
 第2曲アルトアリアは、BWV202の冒頭アリアを思わせる、それこそとびっきり美しい「春の夕べの音楽なのですが、ヘンゲルブロックで聴けないのがほんとうに残念です。


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 ただ、ヘンゲルブロックには、もう1曲だけ、カンタータ録音があります。
(だけ、というのが、がっくり、ですが)
 やはり復活祭のカンタータ、ご存知BWV4です。
 わたしは、いまは、初期カンタータを聴くことはほとんどありませんが、このCDだけは例外で愛聴しています。
 しかし、BWV4は、カンタータの中でも最も真摯な曲のひとつで、(つまり肩の力が抜きにくい)演奏も一筋縄ではいかないため、おすすめするなら、他のCD、例えばガーディナー盤等の方がふさわしいかもしれません。

 ヘンゲルブロックのカンタータ録音は、いまのところ、これですべてです。
(さみしい・・・・)



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