クイズ・3枚の絵~三位一体節(BWV165、129他) + 新しい年巻が始まるにあたってのごあいさつ

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 あした(6月3日)は、三位一体節。

 カンタータは、
 初期(1715年)の、BWV165
 2年目、ツィーグラー・シリーズ最終曲、BWV176
 後期(1726 or 27?)のコラール・カンタータ年巻補完作、BWV129
 の3曲です。

 なお、BWV194はじめ、他にも何曲か、三位一体節に上演されたカンタータがあります。
 様々な内容を包括するような、大きなテーマの祭日なので、
 比較的転用がしやすいのですね。

 BWV194など、パストラーレ、ガヴォット、ジーク、メヌエット、と、何と4曲もの舞曲風アリアがちりばめられた、魅力あふれる超大作ですが、
 はじめオルガン献堂式用に使用されたものなので、
 これら転用作品は、またあらためて御紹介しましょう。


 それでは、まず、
 BWV165 「霊と水の聖なる洗礼」
 から。

 初期作。小規模ながら、初期作ならではのスキの無い、高完度の高い作品。
 親しみやすいテーマに基づく、ソプラノと器楽が織りなすポリフォニーが印象的なアリアに始まって、全曲にバッハならではの、様々な象徴音型がちりばめられた、ちょっと前に話題にした、「ムジカ・ポエティカ」の実例集のような傑作です。

 一番の聴きどころは、何といっても、第4曲レチタティーボ。
 フランクの歌詞にあわせて、超自然的な雰囲気の中で、受難の意味を再確認する美しい音楽。
 「マタイ」のレチタティーボでもよく知られる、弦楽による「聖なる光背」が早くも登場。
 もっとも早い使用例の一つ。
 「神の子羊」イエス・キリストに語りかける歌詞ですが、音楽を聴いていると、あたかも実際に、神聖な存在を目の前にしているかのようです。


 次は、後期の傑作、
 BWV129 「主に賛美あれ」

 実はこの曲も転用説があるのですが、
(宗教改革記念日に演奏されたことは、まちがいありません)
 この曲を御紹介しないわけにはいきません。

 これは、以前ご説明した、全詩節テキスト・カンタータで、「コラール・カンタータ年巻」を補完すべく、後年に作曲された円熟の傑作です。

 そもそも、全詩節テキスト・カンタータは、バッハ後期の、自在の境地に達した筆致による名品ばかりなのですが、わたしは中でも、このBWV129には、特別な愛着を抱いています。
 それはひとえに、この曲のもとになっているコラールによります。

 コラールのメロディは、
 賛美歌「おお、義なる神よ」。(BWV398参照)

 このメロディは、カンタータのコラールの中でも特にモダンというか、特にわかりやすいもので、
 淡々としているようでいて、口ずさむだけで何だか元気がわいてくるような気がします。

 BWV129では、このメロディのコラールの全詩節を、そのまま歌詞として音楽化したコラール・カンタータなわけですが、
 つまり、この魅力的なメロディを、

 華麗なコンチェルト風、(冒頭合唱)
 舞曲風、(第2曲バス・アリア)
 内省的な室内楽風、(第3曲ソプラノ・アリア)
 パストラーレ風、(第4曲アルト・アリア)

 と、さまざまな展開形で堪能することができる、というわけです。

 どの曲もすばらしいですが、中でも、第4曲のパストラーレは、
 小規模ながら、しっとりと愛らしい名品で、必聴。
 天使たちが軽やかに舞い踊り、祝福しているかのような音楽。

 最後のコラールで、メロディがそのまま奏されますので、(祝祭的な派手なアレンジですが)
 まず、メロディを覚えてから全曲を聴いてみてください。

 なお、このメロディは、この前の昇天節のカンタータ、BWV128や、
 このあとすぐ登場するコラール・カンタータの名作中の名作、BWV94等でも使われています。


 あと、もう1曲、BWV176も、ツィーグラー・シリーズの最後をしめくくる傑作ですが、ちょっと長くなってしまった。
 また、来年。(笑)



 ところで、三位一体節なので、
 バッハにとっての「3」(=聖なる数字)について、いろいろ書いてみようと思っていたのですが、
 やはり、というか、なんというか、途中で挫折してしまいました。

 長い上に、自分で読んでもわけがわからないものになってしまった。

 これも含めて、バッハと数字については、もっとまとめた上で、あらためて記事にしたいと思います。



 そこで、そのかわり、というわけでもないのですが、
 バッハ等に関係する、
 「3」枚の絵にまつわるクイズを。(あまり関係ないですね。ごめんなさい)


 フランスの画家、R.デュフィは、
 生涯にわたって、海、競馬、そして音楽の絵を、描き続けました。
 特に、彼は、バッハ、モーツァルト、ドビュッシーを心から愛して、
(ベートーヴェンでなく、ドビュッシー、というところが、いかにもフランス人ですね)
 冒頭にのせたようなものも含めて、オマージュを何枚を描き、
 最晩年に、その結論とも言うべき、
 「バッハ頌」、
 「モーツァルト頌」、
 「ドビュッシー頌」、
 という、3枚の絵を残しました。

 ここで、問題です。
 この3枚は、ほとんど同じ構図で、基調となる色だけが異なるのですが、
 デュフィは、この3枚(3人)に、それぞれ何色をあてはめているのでしょうか?

 
 答えはこちら


  *    *    *


 さて、早いもので、もう6月に入ってしまいましたが、
 教会暦も、ちょうど一区切り。
 イエス・キリストの生涯をたどってきた大きな祝祭日もひととおり終わり、前半終了、
 これからは後半、祭日名も、三位一体節後第〇日曜日、というふうになり、
 カンタータも、聖書の内容の考察に主眼をおいたものへと移っていきます。

 ところで、バッハのカンタータファンにとって、この区切りは、実は、それ以上に、大きな意味を持つものでもあります。

 というのも、バッハがライプツィヒにやってきて、カンタータの作曲、上演を始めたのが、ちょうどこの時期なのです。
 つまり、バッハのカンタータの「年巻」(=1年分のセット)が、始まるのが、ちょうど、この時期だということ。
(バッハのカンタータ年巻としては、初年度の第1年巻、2年目の第2年巻のみ存在。
 よく3年分存在すると言われるカンタータの残りの1年分は、初期から晩年にいたる様々な時期のカンタータです)

 これまで何度も書いてきましたが、
 バッハは、カンタータの年巻を、ひとつの大きな作品と考えていたようです。

 中でも、コラール・カンタータで完全に統一された第2年巻は、バッハの、いや西洋音楽史上最大最高、とも言える大芸術です。
「コラール・カンタータ年巻その2」参照)

 これまで、教会暦にそって、カンタータを聴き、
 生活の中でバッハの音楽を楽しんでいきましょう、と、お誘いしてきました

 教会暦は12月の待降節から始まりますが、
 教会暦にそったカンタータ鑑賞を始めるには、今がちょうど、それに次ぐ、チャンスでもあります。
(これまで、待降節前、四旬節あけのBWV1の時、と、2回チャンスがありましたが、
 これが、3度目の正直です)

 特に、「年巻」をまとめてじっくり鑑賞していくには、絶好のチャンス。
 バッハの生涯最大の「作品」、コラールカンタータ年巻。
 この機会に、全曲を聴きとおしてみるのもいいかもしれません。

 次のお知らせは、6月10日。
 三位一体節後第1日曜日。BWV20
(つまり、長い長いコラールカンタータ年巻の第1曲目)

 とびっきり優美なフランス風序曲から、すべてが始まります。


 なお、今日のBWV165BWV129の記事では、ちょうど、コラールとレチタティーボの話題をメインにしました。

 これまで、なるべくカンタータに親しんでいただくため、よりわかりやすいアリア中心に記事をまとめ、なじみにくいコラールやレチタティーボについてはあえてあまりふれないようにしてきましたが、
 でも、カンタータの神髄は、実は、レチタティーボやコラールにあり、
(マタイやヨハネにおけるそれらの重要性を思い返していただければ、ご理解いただけると思います)
 特に、コラールカンタータにおいては、文字通り、コラールとレチタティーボの位置づけが非常に重要になります。

 今後はそれらについても、少しづつ触れていきたいと思います。

 どうか、今後とも、よろしくおつきあいください。



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